実験室に戻る 量子力学の探検1
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1.量子力学の誕生・・・黒体輻射
鉄の塊を加熱していくとはじめは赤く光るね、もっと温度を上げると今度は白っぽくなってくる。
さらに温度を上げるとなんと青みが少しついてくるのだ。青色の波長は可視光の中でも短い。
逆に赤は長い。
これはなぜだろう。 考えるほど不思議になる。こんなところに量子力学の出発がある。
まず、色ってなんだろう?
色は光の波長により異なるということ。それから赤、緑、青の3原色があってこれが
混ざると多彩な色ができるということは知っているね。
人間の見ることのでき波長(可視光線)は380nmから780nm程度である。
【CHECK】nm(1ナノメートルは10億分の1メートル)
um(1マイクロは100万分の1メートル)
昆虫なんかだともっと波長の短い紫外線を関知できるのもいるよ。
でも人間の目(脳)は単純ではなく、個人差もある。私とあなたの赤は実は全然異なることもある。
次のプログラムでこの様子を見てみよう。
色の3刺激値
人間が赤、緑、青をどの波長でどれくらい強く感じるかを調べたデータがある。これが3刺激値だ。
理科年表にのっているから見るといい。ここではそのデータをもとにガウス関数で近似した値を
採用する。ガウス関数というのは釣り鐘の形をした関数だ。従って本来のデータと誤差があるが
だいたいの様子はわかる。
次のプログラムの赤、青、緑のボタンをまず押してみるとまず標準の曲線が得られる。
これを見ると特に赤は大小2つのピークがあるのが分かる波長が短い領域に青では
なくて紫に見える部分があるのは赤が波長の短い領域にも弱いピークを持っているせいだ。
消去ボタンで消して自分で赤青緑のピークの位置を半角で入力して見よう。
全色ボタンを押すと全部の色変化が見える。明るさはスクロールバーで調節できるよ。
では何も入っていない黒体を加熱して波長を観測していったらどうなるだろうか。
普通なら温度をあげればどんどん光りの振動数も上がっていって高い振動数の光
が強くなっていきそうである。
【CHECK】光の波長×光の振動数=光の速さ(一定)
波長が大きいと振動数は小さい。
【CHECK】光のエネルギーは振動数に比例する。
波長の長い赤外線より短い紫外線の方がエネルギーは大きい。
ところがそうならない。どうしてなのかがわからなかったがプランクという
人がある工夫をして見事解決をした。
その様子を次のプログラムでみてみよう。可視領域ではむしろエネルギーの
低い長い波長(赤い方)が強い。しかし温度が変化するとその様子が変わる。
スクロールバーで温度を変えて作図ボタンを押して見よう。
なぞ解きの鍵となったプランクの工夫は「エネルギー量子」という考え方で
エネルギーは連続ではなく粒のようにとびとびの値しかとれないというものだ。
光はこのとびとびのエネルギーを原子の中の電子が受け取ったり、出したり
することで生まれる。電子の受け取るエネルギーがなんでもいいというわけ
ではなくなった。これをもとにプランクが考えた波長と温度を変えた時の黒体
の中の光の強さを表すものが上のプログラムに入っている。これと最初の
3刺激値を掛け合わせものを考えると実際に温度が変化した時の色が
作れる。そうすれば最初の鉄の色変化の疑問はあっさりかたづくわけだ。
そのプログラムが次にある。温度と輝度を変化させて見てみよう。
全温度ボタンを押すと1000Kから12000Kまでの連続変化の様子がわかる。
可視領域で2番目のプログラムを見ると波長の大きい方が強くなることがわかる。
これが赤く光る原因だ。しかし、温度が上がるに従って他の短い波長の光も強くなる。
従って色は白っぽくなる。
しかし6000kをすぎた頃からなだらかな曲線になりピークを迎える。長い波長ほど
頭打ちが速いから赤の強くなり方が他の色に比べ遅くなる。従って少し青みを増す
ことになる。
プランクの思いついたエネルギー量子というとびとびのエネルギーはプランク自身
はじめはどんなものかよくわからなかった。しかし、この考え方のもとで導かれた
プランクの公式は見事に黒体から出てくる光の強さを実験どおりに説明した。
量子力学の幕開けである。